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相続登記義務化と遺産分割の関係

2024年に相続登記が義務化されることは、別の記事で書きました。
相続登記義務化については、下記の記事をご覧ください。

今回の相続法改正で、相続手続きに伴ってされる、遺産分割協議にも少なからず影響が出ました。

新不動産登記法では追加的義務として、遺産分割協議が成立している場合には、その内容を踏まえた登記手続きも義務化されるとしています。(新第76条の2第2項、新第76条の3第4項等)

また基本的義務(相続などで不動産を取得した相続人が自分のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をすること)期間内に遺産分割が成立した場合としない場合には、それぞれ登記期限のスタートのタイミングが違うため注意が必要です。

ちなみに、遺産分割協議がすでに成立している状態の相続登記を行う場合には、遺産分割協議の内容を踏まえた登記手続きを1回申請すれば、相続登記としては完結します。

この法律ができた理由は、遺産分割協議では、権利者(不動産の名義人)が集約される(相続人は複数名いるが不動産の名義は単独)ケースが多いことから、遺産分割の結果を登記簿に反映させることで、不動産の処分がしやすくなるからと、国は考えているようです。

不動産が処分しやすくなるということは、所有者が不明になる不動産の割合がその分減りますので、それを国としては進めていきたいのでしょう。
国は、所有者不明土地を減らして土地を有効活用することが目的なのでしょう。

基本的義務期間内の遺産分割成立した場合

基本的義務というのは、「相続などで不動産を取得した相続人が自分のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をすること」をいいます。(新第76条の2第1項) 

ではこの基本的義務の期間内に遺産分割協議が成立した場合には、登記はどのタイミングでするのか?
結論から申し上げますと、基本的義務期間内に遺産分割の内容を踏まえた相続登記の申請が可能であれば、それで問題ありません。
上記でも記載した通り、遺産分割に伴う相続登記は1回の申請で完結しますので、その申請のみで義務を履行したことになります。

(注)基本的義務期間内に遺産分割自体は成立しており、先に法定相続分の登記または相続人申告登記をしている場合には、遺産分割から3年以内に遺産分割に伴う登記をする必要があります

基本的義務期間内に遺産分割が成立しない場合

上記で説明した通りで、新不動産登記法では追加的義務として、遺産分割協議が成立している場合には、その内容を踏まえた登記手続きも義務化されます。(新第76条の2第2項、新第76条の3第4項等)

では、基本的義務期間内に遺産分割が成立しなかったケースです。
まず基本的義務の期間内に、法定相続登記か相続人申告登記をする必要があります。
つまり、後から遺産分割をすることがわかっていても、一旦は期限内に遺産分割の前提になる登記を挟む必要があるわけです。(そもそも遺産分割登記の前提として法定相続登記をすることはできますし、遺産分割が成立した場合には1件で済ますこともできます)

上記で書いた通り、遺産分割が基本的義務期限内に成立しなくても、基本的義務期限内に何らかの登記をしなければなりません。
そうすると、2件の登記手続きを必要とするわけですが、上記で説明した基本的義務期限内に遺産分割が成立したケースでは、1件で登記が済みます。

登記件数が変わってきますから、登記手続きでかかる費用も変わってきます。これはけっこうおおきな違いだと思います。
ちなみに基本的義務期限を過ぎた場合に、遺産分割が成立した場合には、登記は遺産分割が成立したときから3年以内に手続きする必要があります。

相続登記義務化と遺言書の関係

遺言書があったら登記はいつまでにすれば?

遺言書がある場合の名義変更手続きは、「相続」または「遺贈」による原因で不動産の名義変更がされます。
遺言書で相続資産を取得することは、相続人だけでなく、相続人以外の立場の人でも可能です。
その場合には、「遺贈」を原因とした登記手続きとなります。
ちなみに遺言書がある場合の相続登記の大半は「相続」を原因とするものです。
「遺贈」が原因になるのは、上記でも説明した通り、相続人以外の人や団体(公益財産法人など)が遺言書によって相続資産を取得する場合です。

これらのケースは全くないことはないですが、稀なケースです。
「遺贈」を原因とする名義変更手続きについては、別の記事で書きます。

今回書いていることは、相続人が遺言書により不動産を取得し、名義変更手続きをする場合のお話です。


さて、相続登記義務化で遺言書がある場合の相続登記も同じように義務化されましたが、その期限は、相続人が、遺言により不動産を取得したことを知った日から3年以内に遺言の内容を踏まえた登記申請をする義務を負うとなりました。(新第76条の2第1項前段、後段)

仮に遺言書の内容を踏まえた相続登記が出来ない時は、相続人申告登記をすれば、登記義務を免れることはできますが、相続人申告登記はあくまで簡易的な登記になりますので、将来的に売却や贈与などの登記をする際には、通常の相続登記をして、現状の所有者に名義を変更する必要はあります。

この期限は、遺言書の内容が「不動産をA(相続人)に遺贈する」でも「不動産をA(相続人)に相続する」のどちらの内容でも同じです。どちらの名義変更手続きでも、相続人は単独で名義変更手続きが出来るように法律が改正されました。(新第63条第3項)

司法書士太田合同事務所からのアドバイス

いよいよ、2024年4月1日から相続登記義務化が始まります。
現状放置されている相続登記であっても、2027年3月末までは、期間に違反することにはなりませんがそれ以降は、義務違反となり罰金の可能性が出てきます。
どの程度の頻度や厳格さで罰金を科していくかは、運用が実際に始まってみないとわかりません。

しかしながら極力、期間内に手続きを終わらせた方が安心でしょう。

今回のテーマである、遺産分割協議や遺言書がある場合には、相続登記義務化の期間に影響が出ますので注意が必要です。(期間のスタート時期に影響します)
実際の実務では、遺産分割協議書が多く、遺言書が少ないというイメージです。(あくまでも弊所での取り扱いの割合の話です)
ですので、法定相続(法律上で決められた人が決められた割合で相続資産を引き継ぐ手続き)を想定した相続登記よりもこの記事で解説した、遺産分割協議や遺言書を想定した相続登記の場合に登記義務の期間がどうなるのかを把握しておいた方が役立つでしょう。