以前の記事で、後見人と医療同意について書きました。

今日は、後見人は死後事務手続きができるのか?についてです。

後見人に死後事務手続きの権限はある?

そもそも後見人には、死後事務手続きをする権限はあるのでしょうか?

答えは、ノーです。

ご本人が亡くなれば、後見等は絶対的に終了しますので、後見人等は後見終了事務以外にご本人の死後に事務を行う義務や権限はありません。

ただご本人に身寄りがない場合には、後見人は死後事務を行うことを周囲から期待され、これを断れない実情があるでしょう。

死後事務を行う法的根拠はないのか?

後見人等が死後事務を行う根拠としては、応急処分義務(民法874条による民法654条の準用)、事務管理(民法697条)があります。

また平成28年の民法改正により成年後見人は、ご本人の死亡後も個々の相続財産の保存に必要な行為、弁済期の到来した債務の弁済、火葬または埋葬に関する契約の締結その他相続財産の保存に必要な行為等を行うことができるとされました。

改正法では、後見人が死後事務をできる要件が明確になっています。

要件は以下の通りです。

① 必要があるときで

② ご本人の相続人の意思に反しないこと

③ 相続人が相続財産の管理をすることができる状態に至るまで

また死体の火葬、埋葬に関する契約、その他相続財産の保存に関する必要な行為をするには家庭裁判所の許可を得なければならないです。

保佐や補助に関しては、改正法の規定の適用がないため、従前どおり応急処分義務や事務管理に基づいて対処する必要があります。

これは私見ですが、事務管理規定(民法697条)は市民後見人が死後事務を行う大きな根拠になると考えます。

事務管理とはこんな条文です。

1項 義務なく他人のために事務の管理を始めた者は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって、その事務の管理をしなければならない。

2項 管理者は、本人の意思を知っているとき、又はこれを推知することができるときは、その意思に従って事務管理をしなければならない。

通常、専門職はご本人の生前に、死後事務委任契約というのを結び、死後の相続手続きを円滑に進めるための準備をします。

市民後見人の方も死後事務委任契約を生前に結んでおくことが理想ですが、もし死後事務委任契約を結んでいないのなら、上記の根拠規定を頭の片隅に置きながら、死後事務を行ってみてください。

*事務管理規定は、第三者との間で法律的代理権があることを主張できるものではないため注意してください。
(最判昭和36.11.30民集15.10.2692)

後見制度のことについても、「認知症対策そうだん窓口」で詳しく書いていますので、そちらもご覧ください。