以前の記事で、相続土地国庫帰属制度について書きました。

今日は、令和5年4月1日に施行される民法改正後の共有地の取り扱いについてです。

法改正がされた背景

現在の法律では、共有物(共有の土地など)に軽微な変更を加える場合であっても、変更行為として共有者全員の同意が必要(改正前民法251)とせざるを得ず、土地の円滑な利用が阻害されていた。

賃借権等の使用収益権の設定は、基本的に持分(共有者が持っている持分のこと)の価格の過半数(A3分の2、B3分の1だとAが持っている部分)で決定できるが、長期間の賃借権等については全員同意が必要と解されており、長期間かどうかの判断基準が明確でないので、全員同意にせざるを得ないため、円滑な利用を阻害するとなっている。

改正後はどうなる?

では改正後の民法ではどうのように変わったのでしょうか?

改正後の法律では『共有物に変更を加える行為であっても、形状又は効用の著しい変更を伴わないもの(軽微変更)については、持分の価格の過半数で決定することができる』と規定されています。(改正民法251Ⅰ、252Ⅰ)

つまり今までは、変更行為である以上共有者全員の同意が一律に必要されていた変更行為もケースによっては、持分価格の過半数同意でよくなったということです。

ではその軽微な変更とはなんでしょうか?

形状と効用の変更を伴わなければ、軽微の変更と法律は言っていますので、形状と効用の定義が重要になります。

法務省の資料では、以下のように解説しています。

「形状の変更」とは、その外観、構造等を変更することをいい、「効用の変更」とは、その機能や用途を変更することをいう。具体的事案によるが、例えば、砂利道のアスファルト舗装や、建物の外壁・屋上防水等の大規模修繕工事は、基本的に共有物の形状又は効用の著しい変更を伴わないものに当たると考えられる。

上記を見る限り、変更というよりも、管理保存に近い変更なら全員同意は不要ですよということなんでしょう。

さて次に、短期賃貸借の定義も規定されました。

1.樹木の植栽又は伐採を目的とする山林の賃借権等10年

2.1に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等5年

3.建物の賃借権等3年

4.動産の賃借権等6か月

※ 借地借家法の適用のある賃借権の設定は、約定された期間内での終了が確保されないため、基本的に共有者全員の同意がなければ無効

上記の期間を超えない短期の賃借権等の設定は、持分の価格の過半数で決定することができる(改正民法252Ⅳ)とされたみたいです。