以前の記事で、相続手続きを司法書士へ依頼する場合の費用について書きました。

今日は、相続手続きの期限についてです。

主な相続手続きについて

相続手続きと一言でいっても、様々な手続きがあります。

この記事では、相続手続きの中でも一般の方が経験しやすい手続きについての期限について説明します。

相続登記手続き

亡くなった方名義の不動産がある場合に、必要になってくる手続きです。

不動産の所有者に関することは、法務局が保管している登記簿によって管理されています。

不動産所有者が亡くなれば、その不動産を引き継ぐ人の名義に変更します。

これを「相続登記手続き」というのですが、令和6年4月1日より相続登記手続きは義務化されます。

法律では相続登記手続きは「不動産を取得した相続人に対し、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をすることを義務付ける」となっています。

預金の解約手続き

亡くなった方名義の金融機関口座がある場合には、口座解約手続きをしなければ、預金を動かすことができません。

結論から言うと預金解約に期限はありません。

預金はお客さんが銀行などにもっている金銭債権(お金を請求する権利)です。債権ですので一定期間請求等をしないと時効消滅(請求する権利が消える法律上の制度)にかかるわけですが、実際に銀行側がその制度を利用することは基本的にはありません。

また長期間放置をしていると休眠口座(10年以上取引がない預金)になりますが、最後の入出金から9年が経過し、預金残高が1万円以上の場合は、預け先の金融機関から登録されている住所に通知が郵送されます。

通知が届けば、その預金は休眠預金にはなりません。この通知はメールで届く場合もあります。メールの場合は宛先不明にならずに受信できれば休眠預金にはならず、引き続き通常どおりの預金として取り扱われます。

以上のことからよほどのことがない限り、休眠口座になることもありません。

相続放棄手続き

相続人は相続資産を受け取らず、債務(借金)なども引き継がない相続放棄手続きが可能です。

別の記事でも紹介しましたが、相続放棄手続きは家庭裁判所で手続きを行う必要があり、自分一人で完結する手続きではありません。

相続放棄の期限は、「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にしなければならない」と民法で定められています。

また相続放棄は期限的な制約があるだけでなく、相続資産の処分行為(例えば、亡くなった方が生前にお金を貸していた人にお金を請求したりする行為)をしないことなども放棄ができる要件になっているため注意が必要です。

相続放棄の期限は原則的には、上記で述べた通り3カ月という期限がありますが、仮に期限が過ぎていたとしても、多額の借金の存在を知らずに自分が相続人になったことを覚知していた場合には放棄できる余地が残されており、そういった最高裁判所の判例も見受けられるため(最判昭和59.4.27)そこは期限が過ぎたからといって完全に相続放棄ができないとまでは断言できないでしょう。

保険金の請求

亡くなった方が被保険者となる、保険契約などがある場合には、保険金の請求があると思います。

この保険金の請求に関しても預金のところで記載したとおり「消滅時効」の規定があり、保険法95条で「保険給付を請求する権利、保険料の返還を請求する権利及び第六十三条又は第九十二条に規定する保険料積立金の払戻しを請求する権利は、これらを行使することができる時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。」と規定されています。

具体的な権利行使できる時がいつになるかは、死亡保険等であれば、死亡の時が一般的でしょうが、当該保険契約の内容をしっかり確認すべきでしょう。

いずれにしても、消滅時効にかかってしまうことは抑えておくべきです。

相続手続きについてさらに詳しく知りたい方は、「相続手続きそうだん窓口」で相続手続きのことを詳しく書いていますので、そちらもご覧ください。

相続手続きそうだん窓口