以前の記事で、死後事務委任契約のトラブルについて書きました。
今日は、死後事務委任契約で銀行口座の解約手続きができるか?についてです。
そもそも死後事務委任出来ることなのか?
結論から言うと、銀行口座の解約手続きのみを委任しても完全に手続きを完了する事が出来ないため、死後事務委任契約で銀行口座の解約手続きはするべきではないです。
委任が出来ないわけではありませんが、委任するお客さまからすると「あえて委任してもメリットがない」という表現が正しいです。
理由は、亡くなった人の銀行口座の解約手続きをする場合には通常、預金の払い戻しも一緒にするため、解約手続きだけしても預金の払い戻しが終わっていないため手続きが完了しないからです。
また預金の払い戻し手続きは通常、相続人(遺産分割協議などで相続分を取得した人)がするものです(預貯金債権は遺産分割の対象というのが裁判所の取り扱いです、最判平29.4.6判時2337.34、最大決平28.12.19民集70.8.2121)
ですので、死後事務手続きで委任できるのは、「口座の解約手続き」ということになりますが、上記で示した通り解約だけしても、預金の払い戻し手続きを相続人がする以上は、手続きが完了しないわけです。
他の方法はないのか?
では生前に銀行口座の解約手続きを依頼できるような手段はないのか?ですが・・・
手段はあります。
遺言による方法です。
遺言執行者として、手続きをしてほしい人を指定します。
そのうえで、解約を望む銀行口座を特定の相続人に相続させる形の遺言を書きます。
遺言執行者は、銀行口座の解約手続きだけでなく、預金の払い戻し手続きをする権限がありますので(民法1014条3項)手続きを完了することができます。
死後事務委任契約は、任意後見契約とセットでされる契約です。
任意後見のことについても、「認知症対策そうだん窓口」で詳しく書いていますので、そちらもご覧ください。