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目次
遺産分割協議ってなに?
まずは遺産分割協議ってなんぞや?と言うお話しです。
端的に言うと、遺産分割協議とは法定相続人(民法で決められた人で配偶者や子供など)が亡くなった方の相続財産をどのように分けるかを話し合って決めることです。
財産と一言で言っても不動産、有価証券、預金口座、現金など様々あります。
1人の相続人が全て取得することもあれば、財産毎に取得する相続人が違うこともあります。
その話し合いの内容を書面におこしたものが遺産分割協議書です。
遺産分割協議書には相続人全員の実印押印が必要です。
一人でも、遺産分割協議の内容に納得できず、サインをしてくれない人がいると遺産分割協議は成立しません。
疎遠で仲が悪かったり、海外住んでいようが、法定相続人(法律で決められた相続人)であれば必ずサインが必要です。
また借金などのマイナスの資産は遺産分割協議で特定の人が引き継ぐと取り決めても、それを債権者(お金を貸している人)には主張できません。
この場合、法定相続分に従って、各相続人が借金を引き継ぐことになります。
この遺産分割協議書が様々な相続手続きで必要になるのです。
各種手続きで困らないためにも、遺産分割協議書は作成しましょう。
手間をかけたくないなら、司法書士等の専門家へ依頼するとよいでしょう。
専門家へ依頼すれば、費用がかかります。
費用をかけたくないのなら、自分で作成するとよいでしょう。
ただし、ご自分で作成する場合は本等でしっかりと調べて作成することをお勧めします。
認知症の親が遺産分割の当事者の場合
そもそも認知症の方が参加した遺産分割協議は有効なのかという問題ですが、認知症の進行度にもよりますが、重度の認知症の場合は無効になります。
遺産分割協議は法律行為であり、法律行為をするには意思能力が必要ですが、重度の認知症の方は意思能力があるとは言えないからです。
ではどうすればいいのか?
最も有効な対策は相続が発生する前に遺言書を残しておくことです。
遺言書で相続分を取得する方を指定しておけばそもそも遺産分割協議をする必要がなくなります。
では遺言書がない場合ですが、このケースだと厄介です。
認知症の方の後見人を選任するという方法はありますが、後見人を選任した場合、後見人になる方は認知症の方が亡くなるまで財産管理等をしなければなりませんし、専門職後見人が選任された場合は報酬を支払っていく必要があります。
また基本的に後見制度を途中で止めることはできませんし、仮に親族の方が後見人になった場合にも遺産分割協議で特別代理人の選任という別の手続きが必要になることもあります。
遺産分割協議をするがためだけに後見制度を利用するのは、デメリットも沢山あるので慎重な判断が必要ということです。
こういった問題が起こる前に、生前対策をしておくか、既に相続が発生しているのであればしっかりと司法書士等の専門家に相談されることをお勧めします。
未成年者が遺産分割の当事者の場合
相続が起きた時、遺産分割協議の当事者に未成年の子供が協議の当事者の時でも、通常通り遺産分割協議はできるのでしょうか?
答えは、出来ますが通常通りは出来ません。
未成年の子供の代わりに協議をする特別代理人を裁判所を通して選任する必要があります。
ではその特別代理人はどうやって選任するのか?
未成年の親権者や利害関係人(今回のケースだと未成年者の兄弟で成人の者)が家庭裁判所に選任申立ての手続きをする必要があります。
申立てには、戸籍や遺産分割協議書案、申立書などが必要で、特に遺産分割協議書案は未成年者にとって不利益とならないものかをチェックされます。
一般の方が作成することは難しいと思いますので是非司法書士等の専門家にお任せ下さい。
遺産分割の当事者が遠方住まいの場合
遺産分割協議をしたいけど、相続人が全国各地に散らばっている場合、全員が一同に会することは難しいと思います。
そんな時どうやって遺産分割協議をすればいいのか?
遺産分割協議書は相続人の連名の形で署名、押印をし、一枚もしくわ複数枚を割印して作るのが一般的です。
ただ話は出来ても直接会えなかったり、一つの書類を持ち回る時間的余裕がないような時は、通常のやり方だと支障が出ると思います。
この場合、相続人毎に遺産分割協議書を作って、複数枚の遺産分割協議書で登記手続きをすることは可能です。
当然協議書の内容が同一の上で、相続人が同意をし、署名と実印押印をすれば問題なく登記出来ます。
なお金融機関などでの手続き(口座解約等)に関しては、機関毎に遺産分割協議書の取り扱いが異なると思いますので、事前に確認する必要があります。
全国各地にいる相続人にアポをとり、書類のやり取りをご自分ですのは、かなり手間がかかる作業です。
遺産分割協議で借金を引き継がないようにできる?
遺産分割協議はちゃんとしました!
亡父に借金があったみたいでそれも引き受けないと明記した!これで一安心!!
…とはいきません。
法律上、債権者(貸主等)との関係では、相続人が法定相続分の割合にしたがって当然に債務を負担することとなります。
これは遺産分割協議をしていたとしてもです。
ではこの場合、何をすれば借金を支払わずに済むのでしょうか?
最も有効な手段は、相続放棄手続きです。
ただこの相続放棄はプラスの財産も全て放棄することになってしまいます。
また専門家に手続きを依頼すれば、その費用もかかりますので、借金が少額でプラスの財産が大きく上回る場合などは、安易にしない方が良いと思います。
また既に遺産分割協議をしてしまった…なんてケースだと原則、相続放棄が出来なくなってしまいます。
これは遺産分割協議をしたということは、財産を通常通り引き継いだ、とみなされてしまうからです。(例外もあります)
ですので、相続手続きを行う際は慎重に考えて、専門家にご相談の上で最善の選択をされることをお勧めします。
遺産分割協議がまとまらない場合
相続が起きて、いざ遺産分割協議をしようとなったものの話し合いがまとまらない!
なんてことは普通にある話しです。
遺産分割「協議」と言われるように、相続人全員が印鑑を押さなければ協議としては成立しません。
当然一人でも欠けたらアウトです。
そんな時、家庭裁判所での遺産分割調停、審判の利用がおすすめです。
調停とは裁判所で行う話し合いです。
当事者の間に裁判所が入り、話し合いがまとまるように解決案を提示したり、必要な助言をしてくれます。
それでも話し合いがまとまらない時は、審判手続きになります。
審判手続きは調停と違い裁判所が審判を下し、強制力があるためその審判に従わなければなりません。
遺産分割調停の申し立てを裁判所にする場合には、手数料として1200円かかります。
また必要書類として、亡くなった人の戸籍(出生~死亡まで)、相続人全員の戸籍謄本、住民票、遺産に関する証明書(登記事項証明書、固定資産税評価証明書、預金通帳の写し)などが必要になります。
遺産分割調停の申立て必要書類
・遺産分割調停申立書
裁判所のホームページからも申立書の書式をダウンロードできます。
・遺産分割調停申立書の写し
写しは、相手方(申立人ではない相続人)に送るため、相手方の人数分提出する。
・事情説明書
事情説明書には、申立人の意見や紛争の要点などを記載します。事情説明書は、相手方の請求があり家庭裁判所の許可があるときは相手方に読まれることがあるので注意が必要です。
・進行に関する照会回答書
調停の希望日や出席しない相続人がいないかどうか相手方相続人と同席したくない場合にはその旨、相手方の相続人に弁護士が就いているかなどを記載します。
・連絡先等の届出書
家庭裁判所が平日に連絡することができる連絡先(現実の住所、自宅や勤務先の電話番号、携帯電話等)を記載します。
・非開示の希望に関する申出書
事件記録の閲覧・謄写請求に対して公開されたくない書面がある場合に、一緒に提出する書面です。
・相続関係を証する戸籍等
亡くなった人の出生から死亡までの全ての死亡、亡くなった人の戸籍の附票、相続人全員の戸籍謄本、相続人全員の住民票か戸籍の附票が必要です。
・遺産などの内容に関する証拠書類
例えば、不動産登記事項証明書、固定資産評価額証明書、亡くなった人の預貯金残高証明書などです。
・相続債務(借金など)の内容に関する証拠書類
例えば、金銭消費貸借契約書の写し、担保設定契約書の写しなどです。
・経緯に関する資料
例えば、遺言書の写し、遺産分割協議書の写し、協議が不成立に終わった遺産分割協議案の写しなど、調停申し立てをするにいたった、経緯を説明したもの
遺産分割協議をする時期について
まず初めに、遺産分割協議は原則的に期限の定めはありません。
遺産分割請求権(遺産分割を行うように請求する権利)は、消滅時効(一定期間権利を行使しないことにより権利が行使できなくなること)になりません。
また遺産分割の禁止(遺言で定めれば、遺産分割の禁止をすることができる)(民法908条)がない限り、いつでも遺産分割の請求ができます。(民法907条①)
ただ協議を先延ばしにすることで、遺産分割当事者や資産の変動が生じ、権利関係が複雑になるため早めの遺産分割がベストでしょう。
遺産分割の方法
遺産分割は遺産の全てを1回で分割することが原則です。
ただ遺産の種類や性質、あるいは相続人の状況などによって資産全部を分割できない場合もあります。
そのようなケースでは、遺産の一部分割をすることも法律は肯定しています。(民法907条)
一部分割の場合には、協議書に一部分割である旨と今回の一部分割が残余財産(分割していない残った資産)にどのような影響が出るのかを明確に記載する必要があります。
遺産分割協議書の財産ごとの書き方
相続財産には、不動産、預貯金、現金、株式、車、貸金債権など多種にわたります。
財産の種類ごとに書いていきます。
不動産
(土地)
所在 A市S町一丁目地番1番1
地目 宅地
地積 100.21㎡
(建物)
所在 A市S町一丁目1番地1地番1番1
構造 木造スレートぶき2階建
床面積 1階50.00㎡ 2階50.00㎡
*不動産の場合には、原則登記事項証明書の通りに記載すれば問題ありません。
*未登記建物(登記されていない建物)は最新年度の課税明細書の記載通りに書くべきです。
預貯金
A銀行 B支店 普通預金 口座番号1111111
B銀行 C支店 定期預金 口座番号1111111
*預貯金は遺産分割の対象となる財産ですので、相続によって当然に分割される財産ではありません。(最高裁判所でもそのような取り扱いの判例が出ています、最判平29.4.6)
現金
1.相続人Aは、次の遺産を取得する(1)現金 100万円
*現金も預貯金と同じく、相続人は、遺産分割までの間、現金を保管している他の相続人に請求できないという最高裁判例があります(最判平4.4.10)ので遺産分割協議の対象にするべき財産です。
車
1.Aは、次の遺産を取得する。
普通乗用車1台車名
ITOESI登録番号 愛知〇〇〇い〇〇ー〇〇
車体番号 第1111号
名義人 B
*車は法律的には動産(もの)ですので、疑義が生じないように(他の財産との区別がつくように)具体的に特定する必要があります。
*通常は自動車登録番号、車台番号の記載だけでいいですが、上記のように記載すれば、より丁寧です。
遺産分割協議書サンプル
司法書士太田合同事務所からのアドバイス
遺産分割協議をするには、様々な事柄を考慮しなければいけないことは、おわかりいただけたでしょうか?
そもそも相続人同士で話し合いが付いていないのであれば、遺産分割調停などの裁判所での手続きになりますし、仮に話し合いがついていても、遺産分割協議書を作成して、相続人の署名実印が必要になる、大変な作業です。
作成した遺産分割協議書は法務局や銀行、保険会社など様々な場所に提出することになりますので、可能なら専門家に作成を依頼して、間違いのない書類を作りましょう。
ご自分で作成する場合には、しっかりと書籍等で確認したうえで、後からトラブルの元にならないような書類を作成しましょう。
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