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会社役員が住所変更したら「登記」が必要
会社の代表者や役員(代表取締役や取締役)が住所の変更をした場合には、住所変更の登記手続きが必要になります。
会社法人の登記事項証明書には、その会社の役員の住所が登記されていますので、住所変更があれば登記事項の変更にあたります。
会社法人登記では、登記事項の変更があった場合には、2週間以内に登記をするという法律上の決まりがあります。(会社法915条1項)
また上記期限を守らないと、過料(罰金)の規定があるますので注意が必要です。(会社法976条)
登記に必要な書類と情報

・登記申請書
・委任状(司法書士などの代理人に依頼する場合で会社実印を押す)
・新住所の住民票
以外にも必要な書類は少ないです。
新住所の住民票に関しては、法務局に提出するわけではありませんが、登記申請書や司法書士に依頼する場合に利用する、委任状に住民票記載の住所変更の日付を記入する必要があるため、住民票を確認する必要があります。
費用の目安(司法書士へ依頼する場合)

・登録免許税 3万円or1万円
*資本金が1億円以下の会社は1万円、その他の会社は3万円です。
・司法書士報酬 1~3万円
*司法書士へ登記手続きを依頼する場合には、司法書士報酬が発生します。事務所によって報酬額は様々ですが、1~3万円のところが多いようです。
合計 3~4万円程度になる事務所が多いようです
登記の期限と注意点

上述しましたが、登記には会社法上、登記義務があり期限があります。
ですので、会社役員の住所が変わった場合も登記義務が法律上はあります。
(会社法915条)
会社において第九百十一条第三項各号又は前三条各号に掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に、その本店の所在地において、変更の登記をしなければならない。
(注)911条3項各号又は前3条各号とは、株式会社や持分会社(合同会社など)の登記事項のことです
そしてこれらは「義務」ですので、義務に違反すれば過料(罰金)があります。
それも会社法上の条文で定められています。
(会社法976条の一部)
次のいずれかに該当する場合には、百万円以下の過料に処する。ただし、その行為について刑を科すべきときは、この限りでない。
1 この法律の規定による登記をすることを怠ったとき。
役員の住所変更は登記事項として大きな変更があるわけではないですが、過料(登記をしなかったことによる罰金)になることは絶対にないとは言えませんので、住所変更した際はしっかり登記手続きをすることをおすすめします。
2024年法改正で「代表取締役等の住所は登記簿に非表示」が出来るように

代表取締役等の住所非開示に関する法改正があり、令和6年10月1日に法律が施行されました。
代表取締役等住所非表示措置は、一定の要件を満たせば、株式会社の代表取締役、代表執行役又は代表清算人(代表取締役等)の住所の一部を登記事項証明書や登記事項要約書、登記情報提供サービスに表示しないようにする措置です。(参考 法務省HP)

法改正の概要(2024年改正商業登記規則)
○登記簿上で代表取締役等が住所を公開することでプライバシーの問題、起業の躊躇、ストーカー等の被害などにつながることを危惧する意見があり、経済界から高まっている。
○令和6年10月1日より法改正により代表取締役等住所非表示措置を創設
○以下の条件のもとで当該措置を利用できる
・ 登記の申請と同時に申し出ること
※ 代表取締役等の住所が登記すべき事項に含まれる登記の申請に限る。
・ 一定の書面を添付すること
※ 上場会社については必要な書面を簡略化
非表示にするには申出書の提出が必要です
非表示の措置を受けるためには、上述する条件を満たしたうえで、法務局に申出書を提出する必要があります。
申出書は下の雛型になります。
住所変更登記と同時に行う場合


役員変更登記と同時に行う場合


この申出はいつでも出来る訳ではなく、会社設立登記や代表取締役等の就任の登記、代表取締役等の住所移転による変更の登記など、代表取締役等の住所が登記されることとなる登記申請と同時にする場合に限りすることができます。
注意が必要なのが、代表取締役等住所非表示措置が講じられている代表取締役等であって、当該代表取締役等の住所変更登記を改めて申請する場合には、再度代表取締役等住所非表示措置の申出が必要となります。
なお一度行った、代表取締役等住所非表示措置を終了することもできます。
終了の申出は、登記申請と同時である必要はなく、単独で行うことができます。
非表示にした場合の登記簿の表示はこう変わります
申出が無事完了すると、登記簿上ではどのような表記がされるのでしょうか?
下記のようになります。

少し見えにくいかも知れませんが、代表取締役等住所非表示措置が講じられた場合、登記事項証明書などにおいて、代表取締役等の住所は最小行政区画(市区町村、東京都においては特別区まで、指定都市においては区まで)までしか記載されないこととなります。
この記事のまとめ
・住所変更登記は変更から2週間以内にしましょう
・2024年の法改正により代表取締役等の住所が登記簿上で非表示可能に
・手続きが面倒な方は司法書士へ依頼しましょう
司法書士太田合同事務所からのアドバイス

会社役員の住所変更登記自体は、必要書類もさほど多くありませんし、費用も大きくかかりませんので、比較的簡易な手続きだと思います。
ただし、会社登記全般に言えることですが、法律上の登記義務があることは確かですので、登記をせずに放置したままというのは、好ましい状態ではありませし、罰金の規定がありますので、住所の変更があった場合には、マメに登記することが大切です。
また、法改正によって会社代表者の方でも条件が揃えば、登記簿上、住所非表示が出来るようになりました。
必要書類が揃わなければ利用はできませんが、個人情報保護が当たり前の昨今では、需要が増えてくる制度だとは思います。
SNSが普及して誰でも情報拡散が可能になった現代で、会社代表者だからと言って、住所が登記上で公開されるのというのは、非常に危険なことでしょう。
今回解説した手続きは、自分で出来ると思っても意外とややこしく大変です。
制度を利用したいという方は、お近くの法務局や司法書士に相談することをお勧めします。
太田合同事務所でも住所変更登記や非表示申出の手続きについて、迅速対応に対応しますので、お気軽にお問い合わせください。
