以前の記事で、任意後見契約と公正証書について書きました。
今日は、任意後見契約と契約解除についての話です。
そもそも解除できるのか?
そもそも任意後見契約は、委任契約の一つなので、契約当事者双方はいつでも解除する事が出来ますが、通常の委任契約と違い、ご本人の保護と当事者の真意を確認するため、一定の要件や方式を厳しく定めています。
また契約内容の一部の解除は、契約の変更と変わらないため、任意後見契約の解除としては認められません。
任意後見契約の解除は、解除時期によって少し異なります。
ご本人がまだしっかりされている時期と、認知症になり判断能力が失われた時期の2ケースがあります。
任意後見監督人の選任前の解除
ご本人の判断力がある(認知症になる前)時期の契約の解除は、任意後見監督人の選任前の解除になります。
このケースでは、ご本人も任意後見受任者(将来後見人になる予定の人)もいつでも契約解除ができます。
ただし、解除は公証人の認証を受けた書面によってしなければならないと法律で定められています。(任意後見法9条1項)
公証人の認証を受けた書面とは、解除する意思表示した書面にご本人または任意後見受任者、もしくは双方が公証人の目の前で、署名もしくは押印することでその書面の真実性を証明する制度です。
そしてこの解除の際には、ご本人の判断力がある(認知症になる前)ことが前提です。
(東京地判平成18年7月6日判時1965号75項)
任意後見監督人の選任後の解除
ご本人の判断力が失われた後(任意後見監督人が選任された後)は、ご本人と任意後見受任者は「正当事由がある場合」に限り、家庭裁判所の許可を得て契約を解除できます。
既にご本人は判断能力を失っており、正常な判断が出来ない状態ですので、ご本人が不利益になるような解除にならないように、裁判所がチェックする仕組みとなっています。
「正当事由」とは具体的には、任意後見人が契約で定められた義務を行わない場合、任意後見人自身が老齢や疾病等の場合、任意後見人と本人やその親族等との間に不和が生じた場合などです。
仮にこの時期に任意後見契約を解除する場合には、ご本人の判断力が失われている状態なので、ご本人の保護を考えて、解除よりも前に法定後見申し立てをしておくべきでしょう。
後見制度のことについても、「認知症対策そうだん窓口」で詳しく書いていますので、そちらもご覧ください。