必要書類

【ご本人】

・印鑑登録証明書(又は運転免許証等の顔写真付身分証明書)

・戸籍謄本

・住民票

・実印

・委任事項のなかに、不動産に関する事項(管理、処分、売買、賃貸など)がある場合には、その不動産の全部事項証明書

【任意後見受任者(任意後見人になる予定の人)】

・印鑑証明書

・住民票

・実印

*成年後見登記のないことの証明書は不要

任意後見人の権限は?

認知症などの人の代理人となる任意後見人にはどんな権限が認められるのでしょうか?
そもそも、任意後見契約は本人(認知症を心配している人)と任意後見人になる予定の人との間でする契約です。

任意後見は、原則的に契約内容は自由ですので、本人と任意後見人予定者との間で契約内容を定めるわけですが、例外的に定めれないこともあります。

例えば、介護などの事実行為や注射、手術、輸血などの医療同意が必要な一身専属権にあたる行為なども任意後見人には、権限はありません。

法定後見も任意後見人と同じく、医療同意などの一身専属権にあたる行為の代理権はありません。
法定後見も任意後見も医療契約を結んだり、診察代などを支払うことはできますが、それと医療同意とは別ということです。

代理権目録で委任事項を定める

任意後見人の法定の代理権の範囲は「代理権目録」に記載されます。
任意後見契約における、法定の委任事項は自己の生活、療養看護、財産管理に関する事務の全部または一部です。
上記で示した事項だけが、代理権目録に記載されて「登記」されます。

上記で示した事項以外でも、委任はできますし、契約書にも記載できますが、代理権目録には載りません。
事実行為は任意後見人には権限がないので代理権目録に記載できません。

不動産売却時にはご注意を

法定後見の場合には、被後見人の居住用不動産を法定後見人が売却する場合には、裁判所の許可が必要です。

民法第859条の3 成年後見人は、成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物又はその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。

(引用元 e-GOV法令検索)

任意後見の場合には特段そのような定めがありません。
法定後見の場合に、事前に裁判所の許可を得ておくことは当然大事ですが、任意後見の場合にはより注意が必要です。
任意後見契約の中で、不動産を売却する場合のご本人の希望や処分方法を具体的に定めておき、代理権目録にしっかりと反映させなければいけません。

契約内容が不明瞭で、裁判所や任意後見監督人(任意後見人をチェックする人)に問題があると判断されないように注意が必要です。

法定後見の法律上申立権者

任意後見契約が締結されているときは、原則的には任意後見契約が優先されますが、任意後見からやむを得ない理由により、法定後見に移行する場合もあります。

その場合に法定後見の申し立てをすることが出来る「申立て権者」をまとめました。

① 民法で定められた申立権者

成年
後見
本人、配偶者、四親等内親族、未成年後見人、
未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、
補助人、補助監督人、監察官(民7)
保佐本人、配偶者、四親等内親族、成年後見人、
成年後見監督人、補助人、補助監督人、検察官
(民11)
補助本人、配偶者、四親等内親族、成年後見人、
成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、検察官
(民15①)

 任意後見契約が登記されているときは、任意後見受任者、任意後見人、任意後見監督人(任意後見契約に関する法律10条2項)

 65歳以上の者(65歳未満の者で特に必要があると認められる場合を含む)(老人福祉法5条の4)、精神障害者又は知的障害者で特に必要がある場合には市町村長が申し立てを行うことが出来ます。(老福32、精神福祉51の11の2、知的障害28)

市町村長が申し立てするケース

・配偶者や2親等内の親族がいない(厚労省通達)
・配偶者や2親等内の親族がいても申し立てを拒否している
・配偶者や2親等内の親族がいても、本人に対する虐待や放置がある
・配偶者や2親等内の親族が戸籍上いるが連絡がつかない
*申し立てが必要な場合には、各自治体の福祉事務所や福祉課等に事情説明をし対応をしてもらう

市町村長が申し立てた後見事件の件数は、増加傾向にあり令和元年に申して立てがあった事件数は、7837件全体の22%です。(最高裁判所事務総局家庭局のデータより)

後見人候補者について

後見人候補者は、成年後見制度が本人の権利擁護のための制度であることを理解し、財産管理、身上保護を的確に行える人でなければなりません。

候補者は、親族であっても、司法書士などの法律専門職であってもよく、後見人としての資格を満たしている人ならどなたでも大丈夫です。

専門職後見人が高い倫理観を持って後見業務を行うのは当然のことですが、親族であってもも後見人に選任されれば家族だからと今までは当たり前に出来ていたことが出来なくなるなどの不都合に感じることが出やすくなるのが、後見制度ですので、注意が必要です。

もう一つ、親族が後見人になった場合の注意点として、流動資産の額が多くなればなるほど(預貯金1000万円以上など)後見人を監督する後見監督人が付きやすくなるということです。

後見監督人には、一般的に弁護士や司法書士などの法律専門職が就くことになります。